小庭と虫

紫玉という名の木槿を植えた

「紫玉」という品種の木槿。苗が届いて約2か月、梅雨入り直後の6月半ばの様子。

少し遡って4月頃のこと。今年に入って旅立った祖母を偲んで、何か花の苗木を植えたいと考えていました。
どんな植物が似合うだろうか?祖母の面影を数日間、そっと頭の中に留めながら過ごしました。自分の好みや、祖母に縁がありそうなだけの植物に引っ張られないよう、あくまでも印象を大切に。次第に見えてくる輪郭をなんとか掬いとるべく、じっと感覚を澄ませ続けました。

祖母の雰囲気を映すとすれば、柔らかい花弁の、ふっくらとした八重咲きのものがいい。色は淡い紫で、落ち着いた佇まいの中にも華やかさがあるもの。

おそらくは私が3歳程の頃か、一番古い記憶の中の、はきはきと瑞々しい祖母。反抗的な年頃、つい辛くあたってしまったときにも、いつも温かく在ってくれた祖母。気が付けば私も大人になり、歳を重ねて少し小さくなった祖母。覚えていないけれど、写真の中で幼い私を抱える、ハイカラで綺麗な、若かった祖母。

好んで着ていた服や、お化粧のあしらい。どんな声で話し、どんな顔で日々を過ごしていたか。祖母は家族思いで清潔好きで、いつも家のどこかを掃除してくれていました。そしてひとたび語り出せば、皆が笑い転げるような名調子。ユーモアのある人でもありました。少しお茶目で、そして何より、どこまでも、どこまでも優しかった祖母。
私にとっての祖母の面影、それが重なる植物とは。静かに思いを巡らせた末、辿り着いたのは「紫色の木槿」でした。

イメージにぴたり。小輪でポンポンのような鞠型の花が咲く、八重咲きの紫色の木槿。(画像引用元:花ひろばオンライン株式会社)

やっと捉えたイメージが消えないうちにと、早速や苗を販売しているオンラインショップを探してみました。そして以前から時折拝見していた「苗木部 by 花ひろばオンライン本店」さんで、まさに思い描いていた通りの品種を発見。はやる気持ちを抑えて、我が家の環境で育てられそうか、じっくり検討しました。数日考えて大丈夫そうだと判断し、注文。選んだのは「紫玉」という少し珍しい品種です。「これこそまさに!」と思えるものに出会えた嬉しさで、勢い余ってしまったのでしょうか。どうやら無意識にカートに2回入れてしまっていたようで、苗木が2本届いてしまいました!!

4月、届いたばかりの苗。双子みたいで、愛おしい。祖母の名に因んで左を「おみつ」、品種名に因んで右を「おたま」と名付けました。

狭い庭に、すくすく伸びる、同じ種類の木槿が2本。我が家の庭は大きくはないので、場所が足りるか少し心配ですが、なんとかなることでしょう。
木槿は、昨今の日本の暑さにも比較的よく耐え、何より生育旺盛なのだそうです。一方で肥料を好む傾向があり、花を咲かせるには少し手間もかかるのだとか。園芸初心者ながら育て方のコツを調べたりして、大切しています。

6月半ばの様子。葉もだいぶ増え、頼もしく生長してきました。或程度の大きさになるまでは鉢で育てます。

祖母は本当に優しい人でした。この木槿が庭にあることで、祖母を身近に感じます。夏の花が咲く頃は毎年、とりわけ美人だった祖母の姿を思い出す季節になるのでしょう。祖母も空から楽しんでくれますように!

「おみつ」にも「おたま」にも蕾らしきものが。しかし油断は禁物。或園芸家の言葉によれば、花は咲くものではなく、咲かせるものだとか。

ところでこの「紫玉」という名前、皆さんは何と読まれましたか?私は「ムラサキダマ」だなんて、なんと可愛らしい名前なのだろうかと気に入っていたら、正しくは「シギョク」と読むのだそうです!なんだか一気に高貴な趣ではありませんか!いずれにせよ、どちらも素敵な名前、そして素敵な花です。(片方は私が勝手に呼んでいるだけですね)

※画像は許可を得て掲載しています。ご快諾くださった花ひろばオンライン株式会社様に、心より感謝申し上げます。

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